11. 豊富 民宿 あしたの城(宿泊)

 
今年の北海道は暑い。夜になっても部屋の温度計が26℃から下がらなかった。北海道の北の外れまで来て熱帯夜の寝苦しい夜を体験するとは思わなかった。日中温まった空気が良好な建物の断熱性能のため温度が下がらず熱帯夜を生んだとものと考えられるが。この宿は全館禁煙で、部屋は勿論食堂、談話室も禁煙である。喫煙が許される場所は、玄関の風除室と部屋のベランダ。ベランダは蚊の襲撃を受けるために使用不可。風除室は蚊は防げるが締め切った狭い空間で煙草を吸うため煙に囲まれて最悪の状況である。しかし蚊の襲撃が怖いため戸は開けられない。煙草を吸わないS氏や自分は良いのだが、煙草を吸う他のメンバーにとって居心地の悪い宿であったであろう。また部屋での飲酒も禁止で、それを知らずにビールを持ち込んだ我々としては大変まずい状態におかれたわけで、ビールの処分に苦慮する。結局、不法投棄も出来ずビールの最終処分地として決定したのは、各自の胃袋の中となった。




 この宿の夕食もまたユニークであった。宿の奥様が食べ方を説明するその料理の名前は牛乳鍋。牛乳を入れた鍋を煮立たせ、そこにジャガイモや野菜を入れ煮えたら椀に取って醤油と唐辛子で味付けして食べる。そして最後にご飯を入れて雑炊にして食べるというものだが、ご飯のおかずになる動物性タンパク質の物は無く、ジャガイモや葉っぱをおかずにご飯を食べろと言うのである。出汁をとったとは到底思えない鍋のスープは、全く味が無くショパイ物好きの秋田県人にとって耐えられるものではなく、直ぐに我々のテーブルの醤油を使い果たしてしまい隣の関東人のテーブルの醤油に手を伸ばす。しかしそれさえも使い切ってしまう秋田県人であった。唯一の救いは、一つまみのイカの刺身で、それが無ければご飯は我々の胃袋に入る事は無かったであろう。







  我々のテーブルの横に陣取った4人のツーリスト達は我々と同様に結構個性的な人達で、外に停めてあったシャドーに乗る神奈川県警の警察官1名、列車やバスを乗り継いで北海道を旅する関東人男女各1名、正体不明の中年男性1名であった。この時期北海道を旅する人間に常識人は我々も含めて少ないようである。我々が今日の朝、苫小牧に上陸し宗谷岬を回ってここに来た事を話すと、驚くと同時にとんでもない連中だなという視線を感じる。きっとこいつらは暴走族なんだなと思ったに違いない。








 
この宿の夫婦には小学校に上がる前の女と男の子の姉弟がいてひじょうに人なつっこい。我々お客の周りを走り回り離れようとしない。隣の家まで歩いて10分以上はかかりそうなこの家の生活環境からして人との接触が少ないと思われ、お客さんに会うのが楽しくしょうがない様子である。下の男の子にいたっては喜びのあまりまだ蒙古斑が残る尻まで出す始末で、この子達にとってお客とのコミュニケエションは大事な社会勉強なもかもしれない。


 フェリーの中に引き続き昨晩も寝苦しい夜を過ごし、少々寝不足気味の北海道2日目の朝を迎える。夜中に結構激しい雨が降ったのはおぼろげながら記憶にあったが、起きてみたら日が差しており青空も見える。前線が夜中に通り過ぎたとしたら今日の天気は良さそうだ。



  1階の談話室に下りてみると、昨日は闇に隠されていた景色が窓の外に広がっていた。緑の絨毯を敷き詰めた様なと言うありふれたフレーズがぴったしあてはまるサロベツ原野が広がっていたのである。窓の外にあるテラスに座りジッーとサロベツ原野を眺めている1人の中年男性。この男性、我々が朝食を終えてもまだ座り続けており1時間以上そのまんまで、旅はこうして楽しむものなんだと言う主張を彼の背中に感じた。我々とは一味違う旅の形を見た気がした。











  この宿の朝食メニューは、自家製プレーンオムレツ(味が薄目)、大量生産ヨーグルト、野菜サラダ(生産地不明)、トースト1枚(6枚切り)、カップ一杯の牛乳(お代わり無し)、願わくは牛乳のお代わりがしたかった。







 AM8:40、昨晩の雨で水溜りが出来た凸凹道を抜けてあしたの城を出発する。 バスの後ろに付いて稚咲内に向かって走っているとバスが道を開けてくれた。北海道の運転手さんはバイクが後ろに付くと道を開けてくれる人が多い。本州とは大きく違うところである。一礼してバスの前に出る。

  稚咲内に出て左折天塩に向かう。サロベツ原野の海沿いを走るこの道は風が強く吹く事が多いが、今日は正しくその日で海側から強風が吹きまくっている。バイクは海側にバンクしながら真直ぐ走っていく。風が無ければバイクの限界にチャレンジできる環境にあるこの道も150が限界である。しかし過去にはもっと風が強く130が限界という時もあった。この道路には冬吹雪を避けるためのシェルターが設置されているが、この状態でシェルターに突入するとバイクは風の支えが急になくなり一瞬倒れそうになり、また出る時はライダーはそのままで風に足元をすくわれるようにタイヤが風下に移動してバンクする。この現象は対抗車線のバスや大型トラックでも起こるので、対抗車線が風上の場合は気を付けたい。対処法としては、すれちがう前にバイクを下半身でしっかりホールドしハンドルを取られないように押さえることだ。


                             
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