八羽山898.6m)登山
2002年10月20日(日) 

Report by Ryuta



八 羽 山  登 山 ル ー ト
秋田市広面発(バイク)⇒仁別⇒オフロード⇒五城目町北ノ又部落⇒舗装道路⇒馬場目杉沢⇒臼内沢

⇒(オフロード)萩形臼内峠⇒萩形ダム⇒(オフロード)赤 沢⇒
徒 歩(ヤブ漕ぎ登山) 往復 八羽山

 予定ではAM6:00に秋田を出発の予定であったが、今回の八羽山は林道から近く、登るのに時間が掛からないと考えられ秋田をAM8:30に出発する。空は曇ってはいるが雨の心配は無さそうで、気温も低くはなく10℃以上はありそうだ。毎年この時期にヤブ山に登っていて、朝霜が降りていたり山で初雪を見た時もあったが今日は比較的暖かく助かった。いつもの相方が仕事で行けなくなって今日は1人で山に向かう。

 秋田市広面を発ってまず仁別を目指し、仁別の集落を過ぎて旭川ダム手前に在る橋を渡らず直進、オフロードに入る。ここから先の詳細は秋田の林道をご覧下さい。

 秋田市と五城目町の境に在る峠を越えて馬場目川に沿って走り、AM9:17北ノ又の集落に着く。この集落は茅葺屋根の家屋が集まって独自の雰囲気をもっていて、私は朝霧に霞むこの集落の風景が大好きである。


 馬場目の杉沢から臼内沢沿いに走り、今度は萩形ダムを目指す。

  杉沢から川沿いを走り、この橋を渡ったら左折する。                          ここで沢を離れ萩形臼内峠に向かう。

















   五城目と上小阿仁の境にある萩形臼内峠。ここまで秋田から42kmであった。     峠から一気に萩形ダム湖まで降りたここが分岐。左が峠、右がダムに行く道。

















 上右写真の分岐の手前奧には素掘りのトンネルが有り、分岐点の目印になっている。            分岐から北に走ると萩形ダムが在る。
















 萩形ダムの上を走って対岸に渡り、赤沢沿いに走る林道で八羽山に向かう。林道からはどの山が八羽山なのか分らないため、八羽山が見えると思われる場所まで林道を登る。






 林道が標高を上げ視界が開けてきたのでバイクを止め八羽山を探す。2万5千分の1の地図と山を見比べ八羽山を探し出し登るルートを検討する。山頂から林道に向かって痩せた尾根が降りているのが見えるが勾配が結構きつそうに見える。

 ここで持って来た握り飯を食べエネルギーを補給し登りに備え、林道が頂上からの尾根と交わって大きく回りこんでいる場所まで戻ってバイクを停める。秋田から約56kmであった。

      八羽山への入口。ここからヤブの中に入り登り始める。



 登り初めはヤブも濃くなく勾配も思ったよりキツクなくてドンドン先に進む。しばらくすると薄っすらと踏み跡らしきものが見えてきて、脇には鉄のワイーヤ-ケーブルの束が落ちていたので木を切り出した時に付いたした踏み跡かもしれない。

 この尾根にはブナに混じって天然の杉も有って、赤や黄色に色づいた山の中で濃い緑が際立って見える。

 汗を拭こうとして首に掛けておいたタオルに手をやるとタオルが無い。ヤブを漕いでいる間に枝に引っ掛って落してしまったようだ。いつもは後ろから来る仲間が拾ってくれるのだが、今日は一人なので拾ってくれる人がいない。帰りに見つければ良いとそのまま前に進む。








 30分ぐらい登って初めての休憩を取る。座って周りの景色に目をやると楓の木が鮮やかに色づき杉の緑と鮮やかなコントラストを見せている。

         左手に見えていた山も近くに見えてくる。


















 ブナの木々も黄色や茶色に色づき山全体を覆っている。毎年この時期、この景色が見たくて山を訪れているのだが、登山道の有る山と違って人に会うことも無く風や鳥の声を聞きながらゆっくりと時を過ごしていると秋田に生れてよかったとしみじみ思ってしまう。

 休憩後再び登り始めると、登るにつれて尾根は傾斜がきつくなり痩せてくる。ヤブ山登りは木の枝等に捕まって登るため足だけでなく腕も使う。全身を使って登っていくので疲労が分散されて意外に疲れないで登れるのだ。

 傾斜がきついという事は同じ一歩でも高度を稼げるわけで、周りの山々の頂きが目線の高さにどんどん近づいてくる。














 尾根が少し平らな所に出ると、そこには登って来た尾根とは別の尾根が下から上がって来ていた。








 この様な場所は下りで間違いやすい。標高の高い位置で尾根を間違うと遠く離れた所連れて行かれる危険性が有るため、落ちていた木の枝で目印を作っておく。

 標高も上がって尾根の幅も60cm程度になってきたが、所々に先端が鋭く尖った木や枝が見うけられる。これは明らか人間の手で掃われた痕でここから上に行った人間がいる証であろう。

 ここの近くに有る与左衛門山や天上倉山に登った時、ヤブ山同好会なる札や登った人の名前や年月日を書いた札を見た事があった。私同様ヤブ山を登る人達もいる様なのでヤブを掃った痕があっても不思議では無いのだが。





 私はヤブ山に登る時、掟をもうけている。

 一つは出来るだけ自然を壊さないようにして登る事。そのため道具を使って枝を掃ったりはしない。以前大仏岳に登った時、背の高い笹ヤブを掃った後を登った事があったが、鋭く尖った笹竹があたかもベトコンの竹槍トラップの様に我々の向う脛を傷だらけにした事があった。それは後に我々が脛にニーシン・ガードを着ける切掛けとなったのだが、そこを通る動物達もまた竹槍の攻撃を受けるはずで、彼らが怪我をしないとも限らないのである。

 もう一つは、出来るだけ道具を使わないで登ること。ザイルやハーケン等を使っては登らない。使わなければ登れないような所は諦めて他のルートを探すか、登らないで引き返す。今まで使用した事はないが安全のためロープを使う事は有るかもしれないが。

 いよいよ尾根が狭くなってくる。尾根の真中に木が生えていて正面からは登れない所に出て、右側に少し巻く事にする。右側は大きく落ち込んではいるが手懸りが有り慎重に行けば問題は無さそうだ。

 回り込んで先に出て見るとそこに絶望的な壁が私を待っていた。

 高さがほんの4〜5m位の壁だが、手懸りになりそうな物が無く岩は脆く手で握っただけでボロボロと砕ける。それでも右側を巻いて木が生えている所を使って登れば行けないこともないと思われたが、ここを下る事は不可能と判断し今回はここで引き返す事にする。



















 ここで遅い昼食を取りながら周りの様子をゆっくり眺めてみる。八羽山の北に続く776mの尖ったピーク(左の写真)が同じ位の高さに見える。と言う事は、ここの標高は750m位で八羽山の山頂までは標高でまだ140m位は有りそうだ。

 地図によると八羽山の標高750mから上は細い尾根が終わってお椀状の伏せた様な感じになっているので、ここさえ越えれれば山頂に立つ事は容易であったと考えられる。山頂まで30分は掛からないだろう。

 776mのピークの奧に阿仁町と思われる町並が見えている。またこの山を越えた麓にはマタギの里根子の集落が有るはずである。

  先ほどから左に見えていた927mのピークも横に見えていた。









   南側に連なる尾根の先には前に登った三枚平山936.2m
    が有るはずだが見えていない。








 昼食を取った後、痩せた尾根を慎重に下り始める。少し下って八羽山の山頂部が見える場所に出る(下の写真)。頂上から左に下った濃い緑が集まった所までは行った模様であるが、こうして見ると山頂まであと少しで残念な気持では有る。













ふと見上げるとブナの木に黄色い葉の蔦が絡まり鮮やかな色を発していた。






 ヤブ山の下りは木の枝に捕まりながら斜面を降りるので、傾斜の急な所も意外と楽に降りれる。

 問題はコース取りである。登山道の有る所は道に沿って歩いていれば目的地に着くが、ヤブ山ではそうは行かない。自分の行く道はヤブの中から見つけ出し自分で決めて進んで行かなければならない。

それでも登りは高い所を狙って登っていけば大体は頂上に着く。しかし下りはそうは行かない。尾根の背を捜しながら下って行くのだが、尾根には次々に尾根の分岐が現れどっちに進むかが運命の分かれ道。登る時、下る時のために時々立ち止まり周りの景色を頭に入れておくのだが、ヤブの中ではどこも同じに見えてしまって良く間違える。

 しかし良く出来たもので、標高の高い所の尾根は痩せているので分岐が分りやすく間違う事は少なく、標高の低い尾根は幅が広く良く間違うが遠くには下りないので大事には至ることは少ない。しかし、間違っても沢には降りようとしないことである。沢には滝などの段差が多く有り、動きが取れなくなる場合が多く転落の危険もある。しかしそうは思っていても、知らぬ間に沢に吸い寄せられてしまうのだが。

    山の向こうには八郎潟が薄っすらと見えている。



 太い木を回り込んで前に出ると目の前に長い枝が落ちていて除けようとして気が付いた。これは目印に置いておいた枝ではないか。オーット! 危ない所で違う尾根に入り込むところであった。目印に従って登って来た尾根を下り始める。

 しばらく下って行くと様子の違ったヤブに入り込んでしまった事に気が付く。木がまだ若い人工林の杉林のヤブで、登りには無かったヤブである。知らぬ間に登った尾根の隣の尾根を下っていたようで、左手に登ったと思われる大きな尾根が見える。

 人工林が有ると言う事は林道が近い証拠でそのまま下れば林道に出ると考えられる。しかしこの木の丈が低い人工林の杉林は、日当たり良いためかヤブの育ちが良く濃いヤブに行く手を邪魔され体中に枝が突き刺さる。





 沢の音が大きくなってきてふとヤブの先を見ると林道が見えている。スタートしてから3時間半で林道に出て、今回のヤブ山ゲームは終了した。結局登った時と違ったルートを下りてしまったため、タオルを回収できなかったが、いまさら探しに行く気も起きずタオルはそのままとした。純綿製のタオルで有ったのでその内自然に帰るであろう。
                                                                                                    この斜面を下りてきて林道に出た。

 降りて出だ林道は、バイクを停めた場所からダム側に200m程戻った所で、バイクの方向に歩いて行くと道端に1BOXカーが止まっており、キノコ取りから帰って来たと思われる男の子2人とそのお父さんが帰り支度をしていた。

 挨拶を交わすと「採れましたか?」と質問される。私をキノコ採りに来た人間と思ったようだが、「山登りです。」と答えると不思議な顔をしていた。普通この時期この場所にいる人間はキノコ採りと相場は決まっているのに、山登りとは不思議な感じがしたのも無理は無い。


  バイクを見えてきて、PM2:50無事スタート地点に帰還を果たす。














   バイクを停めた所から降りてきた方向を見る。コーナーの先右側から降りてきた。




 今日は単独行動ということもあって、無理な行動もできないため山頂までは行かなかったが、いつかまた山頂を目指してチャレンジしたいと考えている。今まで三度頂上を目指しながら今だ頂上に立っていない山もあるが、私は次の機会には必ず八羽山の三角点の標石の写真を撮ると心に誓う。

 私にとって山頂まで行く事は目標ではあるが目的ではなく、山頂に立てなくてもそれに至る過程を楽しむ事が出来れば目的の80%は達成されたものと考えているが、これでまたチャレンジする目標が一つ出来てしまった今日の八羽山登山であった。汗で濡れたシャツを着替えセローに跨り帰路につく。




山の帰りにはいつも温泉に寄って汗を流すのだが、今日は前から気になっていた五城目町内川浅見内に在る湯の越の宿に行ってみることにする。

 萩形ダムまで戻ってから上小阿仁の南沢に向かい国道285号に出る。285号を左折して五城目に向かい群境を越え大きなバイパスが始まる内川郵便局が在る信号を右折し、琴丘・鹿渡方向に約4km走ると道の右側坂の上に湯の越の宿はあった。

 入口を入り靴を脱いで上がると直ぐ右に入浴券の販売機が有り300円を投入して券を買い、その横に有る事務所の若い女性に渡す。すると「いらっしゃいませ。ごゆっくりどうぞ。」と言う元気のよい声が返ってくる。若い女性の挨拶は、最近は「いらっしゃいませ。こんにちわ」の機械的な言葉しか聞いたことが無かったので、久しぶりに聞く心がこもった挨拶に感動してしまった。





















 ここの温泉はこの辺では珍しい少し白濁したイオウ温泉で、地下600mから噴出していると言う。入った感じは確かにイオウぽいが普通のイオウ泉とは一味違う感じであった。入浴料が300円と安いこともあって石鹸もシャンプーも置いておらず、石鹸を持っていなかった山帰りの私にはチョット不向きな面もあっが、設備も新しく良く手入れされているしスタッフの方も感じが良いのでお勧めの温泉である。実際多くのお客さんで賑わっていた。


 日も落ちてすっかり暗くなったPM6:00前に秋田に帰還して、2002年最後の山行きは無事終了した。



                                
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秋田ヤブ山紀行
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