虎毛山〜高松岳縦走登山
2002年 8月15〜16日





Report by Ryuta

  
      虎毛山〜高松岳縦走登山コースMAP




 今回の予定は、1日目山頂部に池塘や湿原がある虎毛山に登り山頂にある避難小屋に宿泊、2日目高松岳まで縦走して湯ノ又温泉に下るコースである。


 虎毛山と高松岳間の長い尾根道はその殆んどがブナの森で囲まれている。この尾根道を訪れる登山者は殆んど無く静かな山行きを楽しめるはずである。


 秋田の今年の夏は雨が多くこの数日も雨が降ったり止んだりで青空を見ていないため、天候が気掛かりである。今日も時々雨粒が落ちて来ている














           雲上のオアシス  虎毛山案内図        (駐車場にあった案内板から抜粋)

 虎毛山は(1433.9m)は、虎毛層と呼ばれる第3期層の砂岩層からなり高松岳から見るとお椀を伏せたようなドーム型をしています。又山肌を走る幾筋もの沢が虎のシマ模様に見えることから虎毛山の名前が付けられた言われています。

 山頂の南側にわ広さ1f程の湿原が穏やかな傾斜で広がっていてそのほぼ中央にはモーセンゴケに縁取られた数個の池塘があり、栗駒岳の秀麗な姿を映し出し、初夏には一面ヒナザクラやチングルマ、イワイチョウの花が咲き、足の踏み場がない程のお花畑となります。又、秋には湿原全体が黄金色に色づき、まるで毛皮を敷き詰めたかのようです。

 「雲上のオアシス」と呼ばれ、女性的なイメージのある虎毛山ですが湿原の末端から見下ろす谷は、男性的で落差100mの万滝(山頂からは見えない。)に代表される皆瀬川源流の春川の渓谷が深く険しく山肌をけずり、エキスパートのみ許される沢登りのルートになっています。



 8月15日AM8:00集合であったが、いつもより集合時間が遅いため油断してしまい寝坊をしてしまった。集合場所行くと相棒のM氏がホンダ・ライフと共に待っていた。今回はM氏と2人での山行きとなったが、登り口と下り口が違う縦走登山であるため私のホンダ・アクティとM氏のホンダ・ライフの軽自動車コンビでのアプローチになった。

 AM8:30過ぎ秋田を出発してまず道の駅(雄勝)に向かう。2時間程で道の駅に到着、トイレと小腹が空いたので立ち食いそばを食べ出発する。

 国道108号から湯ノ又温泉方向(看板有り)に左折し進むと途中で山伏岳に行く道が左に現れるが湯ノ又温泉に向かって右に入る。湯ノ又温泉までは舗装されているが道は狭く最近降った雨で路面が泥で汚れている所が多い。

 温泉から先の道は、大型トラックの重さにも耐えるという木製の橋を渡った辺りから新しく整備されており砂利が厚く敷かれている。林道終点近くに車1台分のスペースを見つけライフを駐車し山登りのスタイルに着替える。


 
今度はアクティに2人で乗り込み虎毛山登山口に向かう。国道108号まで戻って鬼首方向に進み虎毛山に向かう道の入口を探す。虎毛山は進行方向左側に有るので左側に入口を探して旧道の鬼首道路に入る。しっかり地図を見ていなかった私は、左に入口が有るものと思い込んでいたが登山口のへの道が橋の下に見えた時大いなる間違いに気が付いた。国道108号の下をクロスして登山口への道が走っているという事は、入口は右側にあるという事だ。108号の右側に小道の入口があった事を思い出しそこまで戻りその道に入る。


 道は鬼首道路と先ほどの旧道の橋の下をくぐって虎毛山登山口と書かれた看板の前に出る。

 この看板の道を挟んだ向い側は車が10台以上置ける駐車場になっているが、我々はここから砂利道に入って林道の終点まで行くことにする。

 林道は歩けば30分は掛かりそうな位続いていて、我々は林道終点にアクティを停める。ここには車が数台置けるスペースが有る。


                                                                林道の終点。横になっている丸太の先にあった橋は落ちていて使用不能。
                                                                    登山道入口はここの左側手前に有る。


 林道の終点横に有るこの沢を渡って登山道は始まる。











 25分位歩くと道の脇から清水が湧き出ていて飲んでみたが、味は普通で特に美味くも無く不味くも無かった。






 この道は軌道跡の様で軌道が走っていた頃の太い丸太の橋げたを利用して橋が架っていた。造られてから50年以上は経っていると思われる丸太は苔生してはいるが強度は充分で、これからもう50年?は持ちそうな感じがした。





 軌道跡の道らしくゆっくりとした傾斜で道は沢沿いをはしる。








 歩き始めて50分位で沢を渡る橋に出る。木で出来たこの橋は雨で濡れて非常に滑りやすくなっているうえ傾いていて転びそうになる。この様な状況の場合、傾斜の下側を縁の木に添って歩くのが良さそうである。

 橋を渡った所に虎毛山案内図があって、これから進む道の説明が書かれているので頭に入れておくと良いと思う。

 ここから道は本格的な登りとなりグングン標高を上げる。




































 渡渉点から20分でひのき林と書かれた休憩場所に着く。急な登りに体がまだ馴染まず苦しい思いをしていたため思わず休憩してしまった。休憩地点としては絶妙な所にひのき林の休憩地点は有った。








  ひのき林と言うだけに登山道は立派なひのき林の中を進む

















 25分程でヒノキアスナロ林と書かれた案内板と腰掛がある所に着く。ここは休憩しないで通過する。
















 ヒバの林の中で休憩を取る。目の前には宮城県との県境の山々が見える。
















 ヒノキアスナロ林から35分でぶな林と書かれた所に出る。周りの森はいつの間にか見慣れたぶなの森に変わっていた。

 ここを過ぎた辺りから雨が激しくなってきた。カッパを着ても汗で濡れるため着ないで進む。ぶなの森は直接雨が当たらないので少々の雨ではそんなに濡れないのだが、さすがにこの激しい雨だと普通に濡れることを知る。





 高松岳への分岐手前の急登で滑る斜面に思わずブナの木の幹に手を付いてしまう。すると幹を伝って勢いよく流れていた雨水が手に当った。テレビでブナの幹を伝って流れる水の映像を見たことがあったが、その映像と同じ情景が目の前にあった。空から落ちてきた雨が漏斗の様にブナの葉で集められ枝から幹を伝って地面に浸透していく様は、自然のメカニズムの巧みさを見せられた感じで一瞬足が止まってしまった。

 ぶな林の標示から50分で高松岳分岐にでる。渡渉点からこの分岐まで2時間10分あまりの登りは、標高によって周りの木々が変化し色々な林が見られる登山道である。休みたいと思う所に休憩用の腰掛があるので、腰掛の有る所まで登って休憩する事をお勧めする。

 また林を説明した案内板の説明も適切で、書かれていなければ知らずに通り過ぎてしまう景色も,案内板の説明により林を見る目が違ってくるのである。このような案内板は、人が多く訪れる山にはおおいに設置するべきであろう。それが自然の大切さを多くの人に知ってもらう事につながると思う。

       ここを左に入ると高松岳へとつながっている。




 分岐で休憩するが雨は相変わらず降り続いている。どうも我々が雨雲の中まで登ってきてしまった様で止みそうも無い。








 分岐から虎毛山までの道はダラダラとした登りで、周りはガスで何も見えない事もあって今どの辺なのかも分らず、また濡れたズボンが足にまとわり付いて歩きづらく我慢の歩きとなった。


 途中で1回休憩を取り、気を取り直して虎毛山山頂を目指す。周りに高い木が無くなって山頂が近い事を知るがガスが掛かって何も見えず、タダタダ雨でぬかるんだ足元を見つめながら足を前に出す。


 突然、道が木道に変わり山頂真近であると知るが何も見えない。滑る木道に気を使いながら進むと 遠くに避難小屋と思われる建物が薄っすらと見えてくる。









避難小屋到着PM3:50、林道終点から約4時間であった。荷物も重く我々の足での時間である。日帰りの荷物で足の達者な人であればこんなには掛からないであろう。







 避難小屋は秋田県のスタンダードモデルの様で、森吉にあった小屋と同じ様な造りをしている。中は綺麗で備品もそこそこ有るが、昨年泊まった八幡平の八瀬森山荘には及ばない。





 小屋の中に入ると雨戸が閉まっていたため真っ暗。早速雨戸を開けて光を入れる。まずは着ている物を全部脱いで乾いた服に着替える。全身ずぶ濡れ状態から開放されて生き返って感じがする。

 脱いだ服は絞ってロープに吊るすが、服の下からは水がポタポタと滴り落ちていて、この状態では明日の朝まで乾きそうも無く、明日また着ると思うと気が重い。



  毛布数枚と掛け布団1枚が備えてあった。
  空のペットボトルやビンが沢山置いてあったが
   単なるゴミで持って帰るべきである。




 落ち着いた所でまずは乾杯。昨日買出しの時に買った由利正宗の冷酒で、明日晴れることを祈って2人で乾杯する。何故か山で飲む日本酒は格別の味で、下界では普段あまり飲まない日本酒であるが山に泊まる時は日本酒を持参する事にしている。











   
2階も有って宿泊可能人数は20名位か?
 ガスが晴れてきたので二階から外の景色を見てみる。西には明日行く高松岳や山伏岳が見え、北には栗駒山、東には宮城県との県境の山々が見える。残念ながら南方向に見えるはずの6月に登った神室山は雲の中で見えず、鳥海山も裾野が少し見えるだけだった。








 右のピークが高松岳(1,348.0m)、中央のピークが山伏岳(1,315.1m)                避難小屋が山頂のすぐ隣に建っている事が分るショット。







         小屋の二階の方が標高が高い事が分る。









                                             虎毛山 山頂の標石 1,432.9m
















 北側の窓から見えた栗駒山(1,627.4m)は、虎毛山よりも200m近く高くこの辺の山々の中ではひときわ高くそびえ立っていた。






 御酒も開いてそろそろお腹が空いてきたので夕食の支度に取り掛かる。夕食はお約束のレトルト・カレーで、まず鍋にお湯を沸かし熱湯で10分位加熱すると食べられるご飯パックを鍋に入れる。ご飯パックのフィルムが膨らんできたら完了。次はカレーを温めて夕食の出来上がりである。

 お湯で温めるだけで食べられるこのご飯パックは優れもので、そのまま食べられるので食器も要らず食器を洗う必要も無い。量も一個が一食分に丁度よく山で泊まる時は重宝している物である。昔は飯盒でご飯を炊いていた事を考えると便利な世の中になったものである。

 食事も終わり食後のコーヒーを飲む頃には日も傾いて薄暗くなってきた。もうする事は無く後は寝るだけである。しかしまだ時間は7時を回ったところで寝る時間には早すぎるが、寝るしかないと支度をする。

 小屋に有った寒暖計は14℃を示しており下界よりは大分涼しい気温である。この位の気温であれば下に毛布を敷いて毛布を掛けて寝れば丁度良いだろうと、持ってきたシュラフは使わずに寝る事にする。

 寝るといってもまだ8時前で、いつも1時過ぎに寝ている人間としては眠りに付ける訳も無く、中途半端に飲んでしまったアルコールも手伝って益々目が冴えてくる。


 一方、向かいのフロアーに陣取ったM氏からは寝息が聞こえ出しそれがまた気になって寝られない。M氏の寝付きの良さはいつもの事で寝付きの悪い私からすれば何とも羨ましい限りである。

 外は風が強くなってきたようでピューピューと音が煩い。まるで吹雪の夜の様で音が気になってまた眠れない。

 そうこうしている内に気温が下がってきたのか毛布一枚では寒くなってきた。暗闇の中でシュラフを探し出しその中にもぐり込む。しかしシュラフのファスナーを締めると暑く、全開にすると寒い。開けたり締めたりしている内に夜は更けていった。






 8月16日朝、ふと目が覚めると外は明るくなっていて時計は5時になろうとしていた。M氏も爽やかに目覚めたようである。早速、気になる外を確認すると風は無く周りは霧に包まれている。しかし、雨は降っていない。

 寝具を片付け朝食の支度に取り掛かる。今朝の朝食のメインデッシュは納豆。買出しの時、山頂で食べる朝食に納豆がお似合いのような気がして買ってしまったのだが、山の朝食に納豆は似合わない事を後に知ることになるとは。納豆は3個パックを買ったので1個半づつにするつもりであったがM氏が遠慮して1個で充分というので、私が2個食べる事になった。納豆は嫌いでは無いが一度に2パック食べた事はなく不吉な予感が?

 食事を終え荷物をまとめて出発の準備をする。昨晩から干しておいた服に着替えるが、少し水気が無くなった程度で大変気持が悪い。濡れた靴は最悪で水を吸うため新聞紙を入れておいたにもかかわらず、新しい靴下にしっかり水をしみ込ませてくる。



 出発前に山頂と池塘を見に外に出る。山頂で記念写真を撮ってから木道を奥に下って行くと霧の中に池塘が現われる。














 木道はかなり先まであるようであったが、ゆっくり観賞する時間は無く途中で引き返す。


    この季節に咲いている花は少ないが霧に霞む池塘は幻想的な顔を見せてくれた。




















少ないながらも花は咲いていた。水滴を纏った花たちは普段とは違った姿を見せてくれた。













 池塘から山頂に向かって木道を歩いて行くと、いかに虎毛山が平らな山頂部を持つかがよく分かる。この感じは同じ様に山頂部に湿原を持つ八幡平の大白森と似ているが、虎毛山の方が少し起伏があるようだ。



 是非、今度は青空の下でこの雲上の湿原を見てみたいという思いを胸に、虎毛山山頂を後にする。





 湿原で時間を取ってしまい予定より遅れてAM7:05山頂を出発する。

 登りは1時間掛かった分岐まで40分で到着する。ここで休憩を取りこれから向かう高松岳への縦走路に備える。







  分岐から縦走路に入ると道はゆっくりと下り始める。登山道は踏み跡がハッキリ付いていてヤブも深くなく歩きやすい。幾つかのピークを越えるため多少の登りはあったが徐々に標高を下げていく。

 標高が下がるに従って雨が段々強くなってきた。雨雲の中に下りてきたという事なのかもしれない。登りになって息が荒くなってくると朝食で食べた納豆の匂いが胃の中なら上がってくる。 ここで結論。 <山の朝食に納豆はやめたほうが良い> である。

 分岐から歩き始めて1時間30分でこの縦走路で唯一登山道がガレている所に差し掛かる。

 虎毛山から行くと下りになるこのガレ場は、左側下の斜面が崩落しており谷底には大きな岩がゴロゴロしているのが見える。


手掛かりは有るので気を付けて下りれば問題は無く通過出来ると思う。                           左側の谷は岩がゴロゴロしている。

















 登山道は、ガレ場を過ぎた辺りから尾根の右端(虎毛沢側)を通る所が多くなり、道を右に少し外れただけで谷に落ちそうになるので充分気を付けたい。

 またこの辺りからヤブが深くなっていて道が分り難くなっているため、足で道を探りながら歩くようにしないと谷に落ちかねないのでそれにも注意したい。

 縦走路後半は深いブナの森の中を道は進む。道は付いてはいるがヤブが深く歩くスピードが上がらない。ヤブ漕ぎはいつもの事なので苦にならないが、葉に付いた雨が体に付いて気持が悪い。既に全身ズブ濡れにはなってはいるのだが。

 AM11:00、ブナの森(右の写真)の中で休憩を取る。霧に包まれたブナの森は神秘的な雰囲気で我々を包み込み疲れた体に染み込んでくる。この感覚はこの場所に何時間も掛け歩いて来た者だけが味わえるものなのだろう。

 雨は相変わらず降っているが、また歩き始めヤブを漕ぐ。






                                                                                      この写真の中に登山道が見える人は藪漕ぎの名人になれるかもしれない。
                                                                                                  正解は写真をクリックして下さい。

 これからが長かった。足元の登山道を探しながら藪を漕ぐためなかなかスピード上がず、雨が降る中黙々と足と手を出す。雨宿りする場所も無く休憩する気さえ起こらず歩き続けた。M氏も歩くのに一生懸命だたのだろう、アブが顔に近づいて来ても払うことなく歩き続けた様で目の横を刺されている。

 そろそろ高松岳にとり付く急登に差し掛かろうとした時、カランカランという音が聞えてきた。始めは高松岳から下って来た登山者だと思っていたが、登るに連れて音が聞えて来る方向が登山道左側の藪の中であることが分ってきた。

 突然、ガサガサという音と共に若い男性が藪の中から飛び出て来た。こっちも驚いたが、相手も驚いた様子であった。一人ですかと尋ねるともう一人といって藪の中を指差すと少し遅れて若い女性が藪から出て来る。考えてみれば我々もヤブ山登山で同じ様に藪を漕いでいるので驚く事ではないのだが。

 話を聞いてみるとこの2人は湯ノ又沢の支流(登山道のある支流ではなく、南側の支流)から沢登で登って来たとの事であった。登って来た沢は大した沢ではなかったようで盛んにルートの選択を誤ったと口にしていた。

 2人の出で立ちは完璧なまでの沢登りスタイルで雨が降っても御構い無しの濡れるのを前提にした服装であった。反対に晴れた日の藪漕ぎは熱くて大変かもしれないと、余計な心配をしてしまった。

 登山道を歩いていて人と出会うのなら驚きもしないが、藪中から出てきた人とピンポインで遭遇するとは何たる偶然であろうか。その後、彼らが何処に行ったかは知らないが、この2人が今回の登山で出会った唯一の人間であった。


 2人と別れていよいよ高松岳の登りになる。1つ目の急登を過ぎると薄っすらと視界が開け、山頂らしき柱の立ったピークがかなり上に見える。

 まだあんなに登るのかと思うと力が抜けたのか足が上がらない。あそこまで行けば休めると自分を励ますが、足が進まずついに登山道の脇で休む事にする。

 時間を確認するとPM1:00を回っていて、休憩を取らずに2時間以上歩いた事になる。昼食の時間もとっくに過ぎていて腹が減っている事を自覚する。歩くのに夢中で昼食の事を忘れていた。

 この力気の無さは空腹からきていることに気付いたのである。早速、食料の中から魚肉ソーセージを取り出し食べる。美味いィ・・・!!

 人間とは本当に正直なもので魚肉ソーセージを一本食べただけなのに、休憩を終え歩き始めた足はスムーズに前に出る。自分でも不思議なくらい足が出る。



分岐のすぐ東に有るピークで記念写真を撮る。
高松岳頂上での写真は次の機会に譲ることにする。
※後日確認したところによると、この場所が高松岳山頂であったらしい。
写真後ろの高い所が高松岳山頂と思われる。


 何とか最後の急登を上り切り、立っている柱を見るとそこには分岐の文字が書かれていた。ここは山頂ではなく虎毛山への分岐点であったのである。山頂はここから歩いて5分位の奥にあってすぐそこに見えている。山頂には小屋があってそこで昼食にする予定にしていたが、山頂まで行く気力が湧いてこない。

 これから下る湯ノ又温泉は山頂の方向とは反対にあるため、山頂まで行ってまた戻ってきて湯ノ又温泉に下るのが許せないのである。雨は降ってはいるが、分岐から少し湯ノ又側にあるピークで昼食を作ることにする。

 雨の降る中で食事を作るのは始めてであったが、作るといってもお湯を沸かすだけなので面倒な事は無い。例のご飯パックをお湯の中に入れ出来上がったらおかずのハンバーグのレトルトパックを入れ温めて出来上がりである。


 このミニハンバーグが美味かった。腹がへっているのもあったが本当に美味かった。夢中なって食べてしまった結果、食べた数が分らなくなってしまい6個あったハンバーグの4個目に手を付けてしまったのである。4個目を食べ終わってM氏の顔を見てその事に気付く。本当に申し訳ない事をしました。4個目に箸を付ける時一瞬?マークが出たのだが、自分的にはまだ2個しか食べていないと確信して4個目を食べてしまいました。


 M氏は 「イイカラ・イイカラ」 とは言ってはくれたが、私があの状況の中で4個食べられたら不機嫌になったしまうと思う。M氏には本当に申し訳ない事をしてしまいました。この場を借りまして深くお詫び申し上げます。

 雨の中の食事を終え、ここに長湯は無用と湯ノ又温泉に向かって下り始める。この下りは一気に標高を下げる急な尾根道で、濡れた泥道に足を取られて気を使う。しかし危険な所にはロープが張られていて助かった。

 この急な下りが終わる手前に、鼻こすりと書かれた札を発見する。登る時、鼻が地面に付くくらい急な登り坂を表現した言葉なのだろう。私としては、この坂を登る事は遠慮したい気持でその場を立ち去った。

 急な下り坂が終わると尾根から離れ、湯ノ又沢に向かって九十九折の下りが始まる。結局、下り始めて1時間20分で沢に出る。


                                                            軌道跡の道のため道幅が広い。

 沢に出ると登山道は軌道跡と思われる道となり、その道が延々と続く。1時間近く軌道跡を歩いて前方に見覚えのある橋が見えて来た。林道の最終地点である。この林道は現在延伸中のようで工事用と思われる杭が道路に立っていた。今後もっと奧まで車で入れるようになると思われる。

 ここから車までは歩いて数分である。いつの間にか雨は上がっていた。






 分岐のピークから2時間20分、PM4:20車の所に辿り着く。早速、乾いた服に着替えライフで湯ノ又温泉に向かう。












 湯ノ又温泉は林道下の沢添いに在り、道を下ろうとしたら入口に柵がしてあり降りる事が出来ない。仕方が無いので林道の脇に車を止めて歩いて温泉に行こうとした時、車が来て柵を退けて中に入って行く。

 すかさずM氏が走った。柵を退けた人に車で入ってもいいかと聞き了解をもらう。この急な下りの道には、キツイヘアーピンカーブが有って軽自動車でも切り返さないと曲がれないため大きな車は何回も切り返しを行っていた。大きな車で行く人は気を付けたい。

 車を停めタオルを持って玄関に行くと、日帰り入浴PM4:00までの文字が・・・・・

 6月の稲住温泉の再現かと思われたが、「イイですよ」のお言葉。助かった、こうでなくてはいけません。この湯ノ又温泉は沢のすぐ脇に建っており、廊下から見える沢の景色が素晴らしい。


湯ノ又温泉の詳しい説明は写真をクリックして下さい。

 ここのご主人と思われる人から、「お湯は熱いと思いますので脇に置いてある棒で掻き混ぜてから入ってください。」と言われる。確かに棒が横に置いてある大きい湯船のお湯は熱かった。おもっきり掻き混ぜてから入ると肌に鳥肌が・・・・。しかし入れない温度ではなく43℃前後と思われる。

 今回は2日間共全身ずぶ濡れ状態での登山であったが、こうして温泉に入っているとそんな事も忘れ心地良い疲労感を感じながら色々な事を思い出してしまうのであった。

 虎毛山の登りの色々な林、ドシャ降りの中のブナの木の下の雨宿り?、標高1,435m(二階)からの展望、美味かった由利正宗、寝付かれなかった夜、朝霧に霞む池塘、緊張した尾根道の藪漕ぎ、藪の中での出会い、魚肉ソーセージの偉大な力、食べ過ぎたミニハンバーグ、そして温泉。いろんな事が思い出される。 しかし、この温泉は長湯は出来ない。茹で上がってしまいました。


 ここの温泉には石鹸は置いてあったがシャンプーが無くどうしようかと思っていたら、M氏がシャンプーを貸してくれた。私と違って何かと準備の良いM氏である。

 温泉から上がってアイスクリームが私のお約束なのだが、ここにはアイスクリームも牛乳も無かった。120円払って缶コーヒーを頼んだらカネボウ食品製造の缶コーヒーが出てきた。缶コーヒーをありがたくいただいて湯ノ又温泉をあとにする。

 温泉を出てアクティを回収しに虎毛山の登山口に向かう。最初はM氏が運転していたのだが、前が見難くなって運転を替わることになった。M氏、目の横だけでなく上まぶたまでもアブに攻撃され大きく腫れあがってしまい、片目が良く見えない状態になってしまったのである。顔を一回刺されても、それでもアブを追い払わないM氏、キリスト様のような人である。

 登山口の大看板の所に車が数台止まっているのが見えた。林道に入ると前から虎毛山帰りと思われる登山者が歩いてくる。今日は虎毛山に登山者があった事を知るが、林道終点から大看板まで歩くと結構かかると思うが多くの登山者は大看板の所から歩き始めのだろうか?たしかに林道の終点には数台しかスペースがないからすぐに満杯になってしまうとは思うが。
                                                                             不鮮明な写真で申し訳ないが、これが国道108号から
                                                                             
 虎毛山登山口に行く道の入口反対側に有る看板。

 林道終点でアクティを回収し帰途に着く。お腹も空いてきたので以前から気になっていた国道108号から泥湯温泉に抜ける道の入口近くに有る手打ちそば屋さんでそばを食べる事にする。





注、2004/12/1現在。このお蕎麦屋さんは移転しました。




                                                ←秋の宮方向 宮城県境方向→












 ここのおそばの特徴はまるで稲庭うどんの様なお蕎麦。稲庭うどんの様な麺の形と歯ごたえは、目をつぶって食べれば稲庭うどんと言われれば信じてしまうだろう。蕎麦としてのインパクトには欠けるかもしれないが、それはそれで美味しい麺なのである。蕎麦にはうるさいM氏も美味しいと言って一気に食べてしまった。食べたもり蕎麦の正確な値段は忘れてしまったが600〜700円の間であったと思う。この地域の中では個性的なこの蕎麦を一度賞味あれ。

 お腹も膨れてあとは一気に秋田まで走り、PM8:20秋田に到着して今回の山行きは終了した。


           OWARI


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虎毛山山頂から高松岳山伏岳を望む