秋田県 八森町


2003.5.21
2003 FUNKY 2nd.   
        ツーリング レポート

                                                        
Report by Ryuta    
                                     ツーリング コース


秋田上新城飯田川八郎潟町八郎潟外周道路能代

 国道101号八森深浦鯵ヶ沢
生干しイカ車力村 

十三湖 中里やまなみライン大平蟹田 昼食蟹田川⇒ 大平

やまなみライン中里金木木造⇒嶽温泉⇒岩木町 ⇒

アップルロード
大鰐鼠ヶ関坂梨峠小坂毛馬内 ⇒比内

米内沢上小阿仁五城目広域農道上新城 添川

 モト ワークス ヒラタ  
 走行距離 547km



 FUNKY 2nd.ツーリング前日の段階で、参加者はk氏とP氏そして私の3名となっていた。昨年チャンプM氏の参加表明は無かった。M氏の愛車YZF750SPは、前回の1st.ツーリングでFCRキャブレターにトラブルが発生したのだが、その修理は既に終了していた。しかし気掛かりなのはYZF750SPのリヤタイヤで、前回のツーリングで既にスリップサインが出ていて今回のツーリング(600km走行予定)を走り切るには役不足と思われ、それを考えると 「俺だったら参加しないな。」 と前日私はP氏に言い切っていた。

 5月18日(日)朝、私はAM4:40に起きてしまった。最近、年寄りはとっても早起き。AM3:00過ぎに一旦目が覚めてからまた眠りに入る事が多い。しかし結局起きるのはAM8:00過ぎなのだが。

 今日は4時過ぎに目が覚めたが、そのまま布団の中で粘ってAM4:40に起きた。朝食を取ったり支度をして家を出たのがAM5:20頃、いつになく早い時間に店に着いてしまった。まず、前回の1st.ツーリングに修理が間に合わず乗れなかったTZR250R(3XV1)を工場から引っ張り出す。

 このTZRは2001年シーズン9月の5th.ツーリングで鎧畑ダム湖の横でエンジンが焼き付きそのままとなっていたものを、オークション(9,750円で落札)でGETしたエンジンに載せ換えたものである。今回のツーリングが復帰第一戦となる。この9,750円のエンジンが大変お買い得品であった事が今回のツーリングでおいおい分かって来るのだが。

 P氏は昨日AM5:45にはK氏と共に歩いて来るとバイクを店に置いて行ったのだが、6時5分前になっても現われない。電話を掛けようかと思っていた時、聞き慣れたバイクの音が近づいて来て店の前で止まった。バイクで来る人間はいないはずなのに 「誰?」 と外に視線を送ると、 「何と言うことでしょう。」 そこにはYZF750SPに跨ったM氏が居るではいありませんか。

 その時の私の率直な気持は 「あのタイヤで参加する気か?」 であったが、やって来たM氏の口から出たお言葉は、
 「目が覚めたから来ちゃいました。ワイルドカードで参加します。」  そういうことではなくて 「タイヤは大丈夫か?」 と私は聞けませんでした。

 これで今日の参加者は4名となったのだが、ここから直線距離で100mも無い所から来る筈の約2名がまだ来ない。まず私がP氏の携帯に電話するが、出ない。続いてM氏がk氏の携帯を鳴らすが、こちらも応答なし。 「こうなれば行くしかないか。」 と私は YAMAHA NEW PAS に跨りP氏のアパートに向かった。

 ・・・と、道路の反対側をレーシング・スーツ姿にコンビニ袋をぶら下げた2人が、ゆっくりと歩きながらこちらに手を振っているのを発見する。

 「何でこいつら、そんなに余裕なんだ。」とは思ったが何も言わずに店に戻ると、まだ6時は回ってはおらず2人共集合時間には間に合っていた訳で、私としては何も言う事はなかった。これで今日のツーリングは、いつもの20代、30代、40代、50代を代表する四名のFUNKYなメンバーで行われる事になった。

 お二人さんは早速コンビにで買って来た食料を胃袋に押し込んだ後、バイクを工場から押し出してAM6:10出発する 筈であったのだが。

 今回のカメラ車はk氏の番となっていて、昨日R6へのカメラ搭載は終了していた。そのk氏がビデオカメラに電源が入らないと訴えて来る。昨日のカメラ取り付時に作動は確認していたのだが、電源が入らないと言う。前も一晩経ったら電源が入らない事が有ったので以前原因だった箇所をテスターを持ってきて点検する。しかし、そこには問題は無く色々点検したが原因がなかなか判明しない。

 時間だけだが過ぎてゆき、AM6:30を回ってしまった。ここで時間を使ってしまっては今日の予定に支障が出るためビデオ撮影を諦める事を決断、R6からカメラを取り外す事にする。このビデオカメラは1990年製でもう13年も使っているご老体で、昨年は走行中のバイクから落車すると言う荒業まで体験している老兵だからいつ故障してもおかしくはないのだが、故障するなら昨日の取り付けた時にして欲しかった。

国道101号線沿い八森町に在る日本海を望む展望台駐車場
  AM6:35店を出発、横山・金足線から添川に出で上新城に抜ける峠道に差し掛かる。久しぶりのTZRに乗り方を探りながらコーナーをクリアーして行くが、アーでもない、コーでもないと走っているうちに峠は終わってしまった。

 この時後ろを走っていた他のメンバーは、初っ端からのハイペースにスタートの遅れを取り戻そうと私が意識的にペースを上げたと思ったようだ。

 しかし私にそんな意識は微塵も無く、ただ走り方を探っていただけなのだが、前回乗ったRF400Rと比較するとTZRのポテンシャルが高く結構なコーナーリングスピードで走っていた事を後になってから聞かされた。

 飯田川で国道7号に出て八郎潟町から大潟村に向かう。八郎潟ではこの4月からブラックバスのリリース(再放流)を禁止する条例が制定され為釣り客が大幅に減ったとテレビが報じていたが、確かに昨年まで潟を跨ぐ橋の近辺にいた沢山の釣人の姿は殆んど見る事が出来ない。

 八郎潟に元々いる魚を守る為に条例は作られたのだが、この条例はバスを釣りを禁止している訳ではないのに釣り客が減るとは私には理解できない。ブラックバスを釣る人たちはスポーツフィシングとか言ってブラックバスの強い引きを楽しむのだと言う。引きを楽しむのなら釣った後にリリースしようがキープしようが楽しめ事には変わりがないと思うのだが、リリース出来ないから釣りに来ない理由は何なのか?

 ブラックバスの数が減って釣れなくなったので釣り客が減ったと言う話なら私も理解が出来るが、リリース出来ないから釣りに来ないと言うのは何か他に意図が有るとしか私には思えないのだが。

 大潟村の外周道路上には例年程ではないが釣り人の車が所々に駐車していて走りづらい。駐車している車を白く塗ってガラスにクルクルマークのステッカーを貼っておけば警察も取り締まってくれるのだろうが、ここまでは警察も回って来ないのだろう。警察が回って来て一番困るのは実は我々だったりして?


青森県 鯵ヶ沢の由利商店、生干しイカが美味しい。
 車のいない見通しの良い直線で9,750円の実力を測るためアクセルを開けてみると、メーターの針はジワジワと上昇して目盛りの無いところまではいった事は確認した。後ろを走るP氏から後で聞いた話だと数字は194だったとか。スピードはまだ延びていたので、200はいきそうな感じである。

 大潟村では大量の虫を殺傷してしまい、ヘルメットのシールドといわず、バイクのカウルにといわず、風の流れに沿って大量の屍が付着してしまった。この時期、大潟村での屍の色はグリーンが中心でこの色は季節によって変化するようである。

 八竜町で国道7号に戻り能代から国道101号で八森を目指す。八森町のいつものパーキングで休憩を取った後、鯵ヶ沢の生干しイカ目指して走り出す。


 今日の101号線は天気も良く、日本海が青く輝いていて景色を楽しみながら快適に走る。交通量もそんなに多くなく鯵ヶ沢町の由利商店にはAM9:10に到着する。

やはりM氏はリヤタイヤの減り具合が気になるようだ。
 以前から工事が行われていた鯵ヶ沢のバイパスが完成したようで、国道を普通に走って行くとイカ屋さんが並んでいる所を通らずに町の先に出てしまうようだ。私はこのバイパスが着工された頃から知っているが、完成までに十五年以上の歳月が過ぎていることだけは確かだ。秋田の南バイパスも20年近く掛かって今年完成したが、この手の工事は長い。

 バイパスが始る陸橋に乗る手前を右折し旧道に入る。鯵ヶ沢への道路標示があるので気を付けていれば間違う事は無いと思う。 旧道に入れば由利商店はもう目の前、由利商店のいつもの場所にバイクを停めると、目の前に工事中の新しい建物が建っていた。

 由利商店は毎年訪れるたびにバージョンアップしているようで、店内のお品書きも木製の立派な物に変わっていたし、何よりも以前トイレが在った場所に立派な建物が
建っていた。

 このままいけば来年訪れた時には、現在の店舗は無くなっている可能性が大である。

 店内に入ると、いつもはおかあさんとおねいさんが居るのだが、今日はおねいさん1人がいて一年ぶりの挨拶を交わす。おねいさんは普通に 「いらっしゃい。」 「ここで食べます。後ろに新しく出来た所でも食べられますけど。」 と後ろの建物を指差す。

 お勧めの場所を見に行くと、海の面した所に立派なテラスが出来ていて、目の前には青い日本海が広がっている。そしてそこには沢山のカモメが飛び交っていた。ここから見る夕日は本当に美しいだろうと想像されるが、今はまだ朝で日差しは建物の背後から照らしておりテラスは少し肌寒かった。









 しかし、折角なのでここで食べる事にして、各自1枚 計4枚の生干しいかを注文する。

 いつもは4人で三枚なのだが、今日は多目に注文する。しかしこれが後に響いた御仁がいた。




    これが2枚分 1枚 250円

 朝からイカ1枚は結構お腹をいっぱいにさせる量で、M氏は寝不足による体調不良もあって後々まで胃の中で膨張したであろうイカに悩まされる事になる。

 k氏の辞書に満腹という文字は無く、ゆっくりとしたペースでそして確実にイカを胃袋の中に送り込んで行く。



今日のおねいさんは、CAPを被りテニスプレーヤーのように三つ編みにした長い髪をCAPの後ろから出して、お仕事に励んでいた。このおねいさんとの年に一度のお付き合い?も、15年以上になるだろうか。店舗の外壁に書かれたNHK全国放送の店の文字も、当時から有ったからNHKで放送されたのは15年以上前の事だろう。私はその放送を見たような、見なかったような?
 由利商店ではクール便による全国発送も行っている。
 <お問い合わせ先>
青森県西津軽郡鯵ヶ沢町赤石
由利商店 TEL 0173-72-5990

 お土産に半冷凍された生干しイカを買い、それをバッグに押し込んで鯵ヶ沢の由利商店を出発する。

 鯵ヶ沢の街を通過し、広域農道を使って車力村のGSに向かう。農道に入って少し走るとTZRのエンジンが一瞬息継ぎを起す。走行距離184km、透かさずカソリンコックを予備に切り替える。これでこのTZRが予備タンまで180km以上走る事が確認できた。


車力村のいつも利用させてもらっているGS(成田石油)
  広域農道が十三湖まで延びた為、お客が減ったと言う。

 この広域農道は広くは無いが直線が多く結構スピードがのる道で、また脇道も多く対向車や追越に注意しないと痛い目に合う道でもある。

 昨年も急に脇道に入る車に驚かされたが、今年も有りました。我々の前に隼を含む大型バイク3台が現われ、その3台が前の車に追い越しを掛ける。我々もそれに続いて追い越しを掛けた。

 前のバイク3台は数台の車を追い越した後、左車線に戻って車と車の間に入ったが、我々はそのまま右車線を走行し前のバイク3台とその前にいた車の追い越に掛かる。

 すると前にいた車の動きが?  来るか?   来ました。 
 車は右の脇道に入る為、減速を始めた。


 車のミラーに映るドライバーの視線は、我々を認識してはいる様子だが我々も制動を開始する。追い越し中であったのでメーターは見ていなかったが、130〜140位から停止までの結構なブレーキングであった。

 真剣にテレビに見入るP氏。政治ネタは彼には似合わない?
 脇道の手前で停止した車の横に我々も停止し、ドライバーに頭を下げて車の横を通過し前に出る。この時k氏は一瞬、一昨年の北海道でのアクシデントが頭を過ぎったそうだが、今回はあの時とは状況が違っていて今日は状況をゆっくりと見る時間が有った。

 その後、我々の後ろに1台の隼が食い付いて来たようだったが、私は知らなかった。我々は給油のため十三湖へ向かう道から右折し3台のバイクと別れる事になったが、あのような直線主体の道で隼と拘わりたくないのも確かで、車力村での給油は結構上手いタイミングであったと思う。

 車力村に在るいつもの(有)成田石油に我々が入って行くとおじさんが1人出てきたが、直ぐに裏に行って応援のオバサンを呼んできた。このオバサン、毎年M氏と特定の話題でお話するお人なのだが、今年は何故か会話が弾まなかったようだ。

 私のTZR250Rは約200km走って11.8Lのガソリンを呑み込む。、燃費は約17Km/L、15リットルタンクなので250kmの航続距離を持つ事が確認出来た。予備タンも4リットルで間違い無いようである。これ位の航続距離があれば皆さんにガス欠でご迷惑を掛ける事は少ないと思われる。排気煙はご迷惑でしょうが。


 前回の1st.ツーリングに参加したY嬢のTZR250R−SP(燃費10km/L以下))と比較すると格段の高燃費である。これはキャブレターの大きさ(STDが28φ、SPが36φ、断面積比1.39)が影響していると思われるが、私のTZRは今までエンジンを2つも潰して出したセッティングなのに対し、SPはまだセッティング途中だからだろう。

 2サイクルは焼き付く寸前が一番パワーが出るが、薄過ぎれば直ぐに焼き付き、濃くすれば焼き付きはしないがパワーが落ちて燃費も悪くなる。2サイクルのセッティングはそのへんのさじ加減が難しい。サーキットでのセッティングと違って公道でのセッティングは、走行条件が千差万別であちらを立てれば、こちらが立たず、難しさはサーキットの比ではない。メーカーのセッティングは焼き付かない事が第一で、全体的に濃くセッティングされている事が多い。


 給油後、少し休憩してから十三湖からやまなみラインをを通って蟹田に向かう。目的は勿論、シロウオトゲクリガニ帆立である。

 車力村を出でから十三湖の周りを回って 道の駅 十三湖高原 で休憩を取る。十三湖高原と言う名前に疑問を持つ方もいらっしゃると思うが、どうだろう。 私だけか?

 十三湖は蜆で有名な海とつながった湖で海抜は0mと考えよい。高原とは高い所にある原っぱなのだから海抜0mでは高原とは言えない筈だ。この2つは合い入れないものの筈なのだが、しかしこの道の駅では当り前のように一つの名前になっている。実際の 道の駅十三湖高原 は遠くに十三湖を望む高台(高原と言うには標高が低すぎると思う。)に建っている。

 道の駅では十三湖の蜆や高原牧場?で採れた牛乳を使ったソフトクリーム等が一緒に売られている。しかし、道の駅の周りには草原が広がっており十三湖をイメージするものは皆無で十三湖を名乗るには無理が有るように思うのだが。


 これまで十三湖の蜆は何回か(此処では無いが)味わっていたので、HPに載っていたここの高原?で採れたミルクを使用して大好評だと言う、ソフトクリームを食べる事にする。

 建物の中に入ると、レストラン入口横にソフト売り場があって若いカップルがソフトクリームを買っている。美味しいと評判のソフトだけあって売れているようだ。ソフトにはチョット煩い私としては、販売している娘さんを含めて期待?してしましました。



 高校生のバイトではないかと思われる娘さんにソフトクリーム1個をオーダーすると、手馴れた手付きでソフトを作り始める。そして出来上がったソフトと引き換えに300円を渡し50円のお釣をもらう。

 左手に握られたソフトは今流行のフラーワー型?の縁が波打ったコーンに盛られていたが、クリームの量がカウンターに置いてあった見本として比べて明らかに少なかった。ま、それは作ってくれた娘さん(青森県出身の新山千春似)の顔に免じて許すとして、味はどうかと一嘗めるしてみると・・・。
 う・・・、私的には味は普通でした。150円位で売っている物と比較すると、明らかにクリーミーでコクも有り美味しいとは思うが、舌に訴えて来るものが無く感動もしなかった。もう一工夫欲しいところだ。美味しいソフトクリームは、食べる者に感動を与える物なのだ。


私が今まで食べた美味しいソフトクリームBest 3
No.1北海道上士幌町ナイタイ高原牧場のソフトクリーム
No.2秋田県角館町安藤醸造元で売っている醤油ソフトクリーム
No.3秋田県仁賀保町仁賀保高原土田牧場のソフトクリーム

 最近何々ソフトと銘打って色々なソフトが各地で売られているが、旨いソフトは少なく、単なるゲテ物ソフトが多い。結局基本のクリームが美味しくないのに、何を入れても不味い物は不味いのである。

 そんな中で角館の安藤醸造元で売っているくらた醤油ソフトは旨い。ちゃんと醤油の味がしてくどくなく、後で又食べたくなるソフトである。






 この道の駅には、無料のローラースライダーがあってこれを見つけたP氏は居ても立っても居られず早速上にあがってスタートラインに立つ。


 しかし、彼の前には兄弟と思われる小さな男と女の子が滑っていてなかなか進んで行かない。スタートを遅らせて充分な間隔を取ってスタートしたP氏であったが、彼が河辺町ヘソ公園にあるローラースライダーで会得したと言う中腰姿勢のライディングフォームで滑り出すと、見る見るうちに2人に追い付いてしまった。


 ここのローラースライダーには、プラステックの板が用意されていて普通はそれに乗って滑るのだが、P氏の場合はそんな物は使用しないでアルパインスターのブーツで脅威のスピードを稼ぎ出す。後ろから迫り来る大男に2人の兄弟は盛んに恐怖の表情で後ろを振り向くのだが、スピードの差は如何ともし難く、大男に捕らえられてしまった。
2人の兄弟は観念したのか抵抗する事もなく大人しく大男に終点まで拉致されてしまったのだが、階段を登ってスタート地点で待つ父親の所に戻って来た時、彼ら顔には笑顔が戻っていた。

 ローラースライダーに燃える男P氏。P氏らしいと言えばP氏らしいか。


 氏、k氏と3人でパイクの所に戻ると、M氏が元気が無さそうな表情で座っている。どうも鯵ヶ沢で食べたイカが胃にもたれて具合が悪いようだ。食べてしまった物は下から出るまで待つしかなく、時間が経てばその内回復するでしょう。・・・と、他人事なので蟹に向かって出発する。TZRに慣れて来た事もあって自然にペースが速くなる。

 蟹の前に我々には楽しい一仕事が待っていた。十三湖から蟹田町に行く間には峠が在ってやまなみラインと名付けられている。この峠は東北屈指(多分)の高速峠で、パワーがある者が偉い峠なのである。したがって今日の私は下僕となります。


 かにた川は季節限定営業ですのでご注意ください。
 道幅が広くなるまでは私が先頭を走るが、高速レンジに入ってP氏が先頭になり後続を引っ張る。高速コーナーを得意とするP氏&R1は、一気に後続を引き離しに掛かる。k氏、M氏も必死に追いかけるがR1のパワーは他を圧し徐々に離れていった。

 大きな左コーナーでM氏がk氏の外側から抜きに掛かるが、横に並びはするもののYZF750SPもR6も立ち上がり加速に大した違いは無く、抜き去るまでには至らない。しかしM氏のプレッシャーを感じたk氏は、次のコーナーの手前でウインカーを出しM氏を前に出す。前に出たM氏はP氏を追うが、既にP氏の姿は小さくなっており追い付ける状況では無かった。




 今日のやまなみラインは山菜取りなどで駐車している車が多く気を使うが、私も大きく離されないよう後を追う。するとメーターパネルの赤いランプが一瞬点燈して消えた。点燈したのはエンジンオイルのランプだったのだが、オイルは満タンにして来た筈なのでまだ250km弱しか走っていない段階でのオイルランプの点燈は考えられず、何かの間違いだろう程度にしかその時は考えなかった。大平で皆と一緒になって蟹田町のかにた川を目指す。


陸奥湾でこの時期獲れるトゲクリガニ、大きさ等で価格が違うがこれは750円であった

 しばらくは点燈しなかったオイルランプも、蟹田の橋を渡ろうと減速した時またオイルランプが点燈する。かにた川の駐車スペースにバイクを止め早速オイルタンクを覗き込むと、オイルはタンクの下3分の1位しかなくオイルの残りが少ない事を知る。満タンの筈であったが、この走行距離でこんなに減る事は考えられず、私の思い違いで出発時点で満タンではなかったのだろう。これで何処かでオイルを調達しなければならない事になった。




 一年ぶりのかにた川は、この時期混んで長く待たされるのが常なのだが、今日は席が丁度空いて直ぐに席に付く事が出来た。私とk氏は昨年食べて食感に感動したシロウオのおどり食いトゲクリガニを注文P氏はカニをM氏はお腹の具合がまだ本調子でなくカニ汁を注文する。

 トゲクリガニは、k氏以外の3名は5〜6年前に食べた事はあったが、k氏は今回が初めてのチャレンジである。




 このトゲクリガニの形は毛がにに似ていて、地元では毛がにと呼ばれているらしいが、茹でられたカニの色は本当の毛がによりは少し赤味がかっている。カニ自体は大きくないので身は多くはないが、身は締まっていて美味しく、とにかくカニ味噌が甘くて大変旨い。


 今回食べたカニには卵が入っていてこれがまた旨かった。どちらかと言うとカニを食べるのは苦手な私だが、久しぶりのトゲクリガニの美味しさに体裁も気せず食べ散らかしてしまった。

 k氏も初めて食べたトゲクリガニに大変御満足の御様子で、カニの全てを食べ尽くしていた。


 P氏も久しぶりに食べたトゲクリカニの美味しを再確認した御様子で、ヤッパリ旨いカニだと綺麗に食べ尽くしていた。



 M氏の注文したカニ汁は500円。カニから出た出汁が味噌とマッチして大変美味しいとM氏には好評であった。カニが丸ごと入って500円はお徳かもしれない。







 シロウオの踊り食いは昨年初めて食べたのだが、その食感が忘れられず今年も注文してしまったが、2度目とあって昨年ほどの感動は感じなかった。ワサビと鶉の卵に醤油を加えて物をシロウオの入った器に入れると、身の危険を察知してかシロウオは激しく動き回り最後の足掻きを試みる。

 人間とは残酷なもので、断末魔の激しい動きを楽しみながらシロウオを食べ、その歯応えを楽しむ。今年も楽しませて頂きました。 慎んでシロウオのご冥福をお祈りいたします。







 かにた川の外では帆立を1個50円で売っていた。昨年も売ってはいたのだが食べなかったので、今年はチャレンジする事にする。一人の女性が帆立の前に立って帆立を見ていたが、私が帆立を注文すると怪訝な顔をして私の方を見る。

 どうもこの女性は帆立が焼けるのを待っていた様なのだが、私に注文を先にされた為、慌てて彼女も注文していた。彼女には申し訳なかったが、先に帆立を受け取ってテントの中のテーブルに着く。これに醤油を垂らして美味しく頂きました。これで50円は安いしょ・・・。





 同じテントの中で帆立の一本釣りが行われいたが、我々は見学するだけにしてそこを立ち去った。

我々の後ろに見える蟹田川には、シロウオ漁のヤナが見える。

 ここから、さっき来たやまなみラインに戻って金木町を目指す事にする。金木町はこの辺では大きな町なので、2サイクルオイル(できれば高性能オイル)を置いている処が有ると予想しての決定である。

 帰りのやまなみラインもP氏の独壇場で、彼は先行逃げ切りを図る。走行後P氏は何で付いて来てくれなかったとM氏とk氏に言っていたが、誰が一旦離れたR1に追い付けると言うのか。無理なものは無理なのだ。



 やまなみラインを走り抜け金木町に入る。街中に行けばバイク屋さんが有る筈と金木の街に入るとホンダの看板の揚がったバイク屋さんを発見、バイクを止めて中に入ると親父さんが居て2サイクルオイルを置いているか聞いてみる。するとスクーター等に使うオイルは有るが高性能オイルは置いていないと言う。それではこの辺で置いているお店を知らないかと聞いてみると、国道に出て五所川原方向に進むと息子がやっているバイク屋が有から、そこ行けば色々なオイルが置いて有ると教えてくれた。

 会話の中に「息子」という言葉が何回も出て来て、その息子さんはこの親父さんの自慢の息子さんであろう事は想像できた。バイク屋さんの後継者問題。この問題も地方では結構深刻な後継者不足が言われて久しい。若い人が入ってこれない業界に未来は無いと思うがどうなんでしょう。私にも息子はいるが、バイク屋をやりたと言ったら「やめとけ」と言ってしまうだろうな。

 バイクの所に戻って国道を目指すが、金木の町は一方通行が多く直ぐには国道に出られない。以前、太宰治の生家である斜陽館に行った事があって、斜陽館からは国道が近かった事を思い出す。斜陽館を探して幾つかの角を曲がると斜陽館の前の出る事が出来た。斜陽館に来たのも暫くぶりで、前来た時は昼食を食べたのだが今は経営が金木町に変わって館内の様子が変わったと聞いている。しかし今日は斜陽館に立ち寄る時間は無く、前を通過して国道に出る。

 国道に出て左折し200m位走ると右側にPRO’S店の看板が見えて来る。店の外にバイクは出ておらず一瞬休業かと思ったが、ガラス戸が開いたので中に入って声を掛けて見る。すると奧から30歳代中ばと思われる縁無しメガネを掛けた青森美人さん(多分自慢の息子の奥様)が出て来たので、2サイクルオイルを置いているかを聞くと、「オイルはそこに・・・。」と私の後ろを指差す。私はオイルが並んだ棚の前を通り過ぎていたのだが気付かなかった。目が美人さんの方に行っていて周りを見ていなかった様である。


 棚にはカストロールとWAKO’Sが並んでいたが、両方とも私の好みのオイルではなかったが贅沢を言っていられる状況ではなく、カストロールのTTS(0.5L)を2本購入する。シートを外す為レンチを拝借出来ないか奥様にたずねると、奧から先ほど立ち寄ったバイク屋さんと同じ顔をした店主が出て来て10mmのT型レンチを貸してくれた。

 オイルを入れた後、店主に車力村に行く道をたずねる。国道を少し戻ってから左折しても行けるが、この先の道を右折しその先をまた右折すれば車力の青看板が出ているはずだと教えてくれた。店主にお礼を言って、道路向かいで待っていた皆の所に戻り教えられた道を行く。車力の文字を発見しその交差点を左折すると、道は部落の狭い道を抜け田んぼの中に入って行く。

 田んぼの中の道は見通しの良い直線路で自然にスピードが上がる。道が水路を跨ぐ所にバンプ(段差)出来ていてそこでバイクが飛ばされそうになる。こんな道は北海道では頻繁に遭遇するもので、いつもの様に腰をシートから浮かし足でバイクをホールドして通過した。それを後ろから見ていたM氏の話によると、私のTZRの両輪は完全に路面を離れジャンプしていたと言う。私に宙を舞った意識は無かったが、M氏が見たと言うのだからそうなのだろう。どうせなら後続の皆様に、意識して大ジャンプを披露すれば良かった。

 田んぼの中の道が狭くなった頃、我々の前にゆっくりと走るシャコタン仕様のホンダ オデッセイ(トヨタ エステマかも?良く覚えていない。)が現われる。この車の前後には地上スレスレのスカートが装着されていて、例の水路のバンプでスカートが路面に当たりそうになっている。そのため運転手の20歳台前半と思われる田舎のアンチャンは、バンプに車を斜めに進入させて路面にスカートが当たらない様に一生懸命運転している。

 つまり彼は我々の前でバンプの度に蛇行運転を繰り返しているわけで、我々は追い越しも出来ずにアンチャンの車に金魚の糞状態で付いて行くしかなくなってしまった。暫く走って彼は部落の中の脇道に消えて行ったが、こんな道路状況下でもシャコタン車に乗る彼の根性には感服してしまう。素朴な疑問。彼らは毎年雪が解ける頃アンダースカートを新しくするのだろうか?はたまた冬は車に乗らないのか? 分かった! 冬は除雪に使うんだ。だって確か四駆だったもん。

 車力村から木造町に向かうと、正面に岩木山が見えて来る。道路脇には菜の花が咲いていて、 「黄色い花と岩木山」 とってもビューティフルでした。一旦国道101号に出てから道の駅の所を右折し鯵ヶ沢スキー場に向かう。鯵ヶ沢プリンスホテルが岩木山の麓に見えて来た頃、前から30台近いバイクの集団がやって来た。スーパースポーツからアメリカン、ネイキッド、オフロードと色とりどりのバイク集団で、もうモーターサイクルショウ状態。金額にしたら確実に2000万円越えているだろう。

 私はこの手のバイク集団に遭遇するといつも疑問に思う事がある。それは、このライダー達はこのまちまちなバイクと一緒走って本当に楽しいと感じて走っているのだろうか?という疑問である。私にはそれぞれのバイクの面白さを殺し合って走っているとしか見えないのだが、本当の所を聞いてみたいものだ。しかし私があのような集団の中に入って走る事はまず無いと思われるので、この疑問の回答は永遠に得られないかもしれない。

 テレビコマーシャルにも出て来る岩木山と鯵ヶ沢プリンスホテルの美しい写真を撮りたい衝動に駆られたが、お約束の写真を撮っても詮無い事なので、そのまま止まらずに岩木山の外周道路に出て右折、鯵ヶ沢方向に向かう。

 ホテル入口の前を過ぎて少し行くと道は狭くなりセンターラインが無くなる。舗装はされてはいるが狭く曲りくねった道を走って、鯵ヶ沢と岩木山を結ぶ道路に出た。ここから岩木山スカイライン入口までの道は、以前よく走っていた道だがこの10年位は走っていなかった。この道は結構トリッキーなコーナーが多く以前はよく交通事故の現場に遭遇していたが、道の改修が進んで前よりは走り易くはなっているようだ。


 TZRにも慣れたきた事だし先頭で少し頑張って見ました。軽量な車体をいかしてコーナー手前でフルブレーキングを掛けギヤダウン、コーナーの1/3位までブレーキを引き摺りながらコーナーリングし、先が見えた段階でアクセルをワイドオープンにして立ち上がっていく。

 コーナーリングの楽しさを久しぶりに味わってコーナーをクリーヤーして行くと、アッと言う間にスカイラインの入口まで来てしまった。以前走った時に比べると何と短く感じた事か。アベレージスピードが大分高くなっているようである。

 弘前方向に少し走ると嶽温泉の入口の看板が見えて来て、そこを左折し嶽温泉に向かう。嶽温泉は温泉宿が十数軒集まった小ぢんまりとした感じのよい温泉で、今回はインターネットで紹介されていた小島旅館さんの温泉に入る事にする。


小島旅館さんの前で駐車スペースを探してウロチョロしていると、旅館の中から女将さんらしき人が変な物を見る様な目で我々をジーとみている。結局、旅館の前にバイクを停め、玄関に行って女将さん(多分)に入浴出来るか確認すると入浴OKの返事をもらう。

 温泉道具を取りにバイクの所に戻り、皆で玄関に行く。

女将さんが私に
「どちらからですか?」と聞いてくる。私は
「秋田から日本海沿いを走って来ました。」と答えると、
女将さんが言った言葉が振るっていた。
「そちらから来たなら途中にもっと良い温泉が有ったでしょうに。」
「おいおい、この温泉は良くないのかい。」とツッコミそうになってやめた。
「嶽温泉はいつも前を通るだけだったので、今回寄らせてもらいました。」
と答えると、女将さんは
「そうですか、それではごゆっくりどうぞ・・・。」と言った。


 私は入浴料350円を女将さんに払って二階の浴場に向かうと、後ろのP氏はそのまま玄関を通過して女将さんに呼び止められてしまった。女将さんから「350円です。」と言われ、お金を払うP氏。まさか意識的ではないよな?←


 浴場は階段を登った二階奧に有り、大きくはないが掃除もゆきとどいた小奇麗な浴場であった。湯船は2つ有り、手前と奧でお湯の温度が違っていて、手前の向かって左の温度が38度前後(多分)、奧の右側が42℃前後(多分)と思われ、湯船は私の好きな木(青森ヒバ?)で造られていた。

 早速、奧の熱めの方から入ってみる。私としては入れないほど熱い温度ではなく、疲れた体にお湯が染込んできて思わず「極楽!、極楽!」と口走ってしまいそうになる。


 何と言ってもここの温泉の特徴は、お湯である。温泉のお湯も千差万別で、ただの白湯みたいな物から硫黄臭の強い白濁した物まで色々だが、ここのお湯は薄く白濁している半透明のお湯で湯口は硫黄で白くなっており、硫黄臭も有る丁度良く温泉らしいお湯なのである。嶽温泉のお湯は、八幡平の大深や蒸の湯温泉のお湯に似て私が好むタイプの温泉であった。


 このお湯の良さは入って見なければ分からないのでお近くにお越しの節は、  是非 嶽温泉 小島旅館にお立ち寄り下さい。「何かコマーシャルみたいになってるぅ・・・」
正直言って嶽温泉にはあまり期待していなかったのだが、嶽温泉 侮るべからずである。

 我々の他にもう一人お客さんが入っていて、お風呂から上がったところで声を掛けてみる。そのお方は弘前から来たのだが、元々は札幌のお人で仕事で弘前に来ていると言う。温泉好きのこのお方は、この機会に青森の温泉を回って楽しんでいると言う。北海道の温泉にも詳しく、私と北海道の温泉の話で盛り上がったが、今日、蟹田でシロウオやカニを食べて来た事を話すと是非行って見たいと場所を聞かれてしまった。

 温泉から上がって、玄関横のソファーで休憩を取る。自販機にフキゲンなる飲料を発見し思わず130円を投入してしまった。初物には取り合えず手を出して見る。・・・が私の信条でもある。

 今となっては、「乳酸飲料であったかも?」程度のあやふやな記憶しかないインパクトの薄いフキゲンを飲み干して、体から汗が引くのを待つ。このネーミングの由来がどこから来るものなのか、飲んでも答えを見つけられないフキゲンであった。名前の由来が分からなくて不機嫌になる飲み物なのかもしれない。




 今の時間はPM15:15、予定では十和田湖を回って樹海ラインを走って帰る予定であったが、ここで、この時間では発荷峠にPM5:00(何故、PM5:00かと言うと、暗くなってから走っても楽しくない。)に着くのは厳しいかも、との心配が出てきた。

 毎回ツーリング後半になると元気が無くなるP氏は、ここからどこも寄らずに真っ直ぐ帰りたいなどと言い出すし、反対にいつも後半に調子が上がってくるM氏が樹海ラインに照準を合わせているのは見え見えだし、取り合えずはアップルラインで大鰐まで行くことにする。



         k氏
 岩木神社の前を通ってアップルラインに右折すると、この時期林檎の木には白い花が満開でアップルラインはお花見街道となっていた。林檎の花と岩木山。この組み合わせも又お約束の絵柄で、そのお約束を果たそうと撮影場所を探しながら走る。

 カメラを林檎の木の下まで持ち込んでお約束を果たしている人もいたが、ミラーに映る岩木山の頂上付近は薄雲が掛かっており、太陽光線も逆行気味でもあり今回は写真撮影を諦め先を急ぐ事にする。

 アップルラインは丘陵地帯を走っている為、アップダウンが多い。下り坂で自転車のロードレーサーに追いつくと、赤いジャージを着たレーサーは徐々に加速してスピードを上げていく。


 ツールドフランスでは、100km/h以上のスピードでアルプスを下って行くが、ツールドアップルロードではそれほどのスピードは出ないようで、必死の形相で走る赤いジャージを我々は外から一気に巻くって前に出る。

 P氏&R1
 国道7号に出て大鰐手前のShellで給油する。ここで入れれば秋田まではガソリン持つだろう。

 時間はPM4:20になろうとしている。予定通りここから発荷峠まで30分で行くには時間的に多少無理がありそうだ。

 かといってこのまま国道7号を走るのも苦痛なだけだし、相変わらずM氏とP氏の考えに変わりは無さそうだし悩みは尽きない。

 スタンドの休憩室で休んでいたら壁には北東北3県の大きな地図が張られていて、その地図を見ていてある事に気付いた。

 私は北東北の国道は殆んど走破した筈であったが、私がまだ走った事の無い国道が大鰐〜秋田間に存在いする事をその地図を見て発見した。


 Shellの休憩室にてこれから先のコースを検討する。
 国道7号線の碇ヶ関から小坂に抜ける国道282号線は、青森から秋田市に帰る時は遠回りになる事もあって今まで一度も足を踏み入れて事の無い国道であった。

 人の話に峠が有ると言う事は知ってはいたが、その峠がどんな峠なのかは知らなかった。しかしこの際、その峠に賭けて見るしかP氏とM氏を満足させる方法は無いと決断したのである。

 しかしこの決断が、本日のハイライトを作り出す事になろうとは、この時まだ私は知る由もなかった。

 PM4:30過ぎGSを発って碇ヶ関に向かう。7号線は車が多く車の後に付いて走るだけの退屈な走行が続き、私はこの状況のまま走ることだけは避けたい気持でいっぱいだった。

 碇ヶ関の関所の所を左折し国道282号線に入る。入って直ぐの所にある駐車スペースには数台の車が停まっていて、どの車もワイドタイヤを履いているのが目に付いた。前方からもインプレッサやワゴンRのワイドタイヤ装着車がやって来る。

 282号に入ると直ぐ、峠道が始っているのかコーナーが連続した道になる。1kmも走らない内にワイドタイヤの謎は解けた。コーナー路面には黒いタイヤ痕が幾筋も付着していて、明らかに走り屋さんが走った痕跡が見られる。つまり国道282号線のこの峠(その時は峠の名が坂梨峠と言う事は知らなかった。)は、走り屋さんご用達の峠であったのだ。走り屋さん達は、碇ヶ関の関所をベースにこの峠を楽しんでいるようである。

 思わぬ所で一万円札を拾ってしまった気分の我々は、この一万円をここで使い切ろうと一気にペースを上げる。私が一番後ろに下がってP氏が先頭、二番手がM氏、三番手がk氏となってヘアーピンカーブが続く登り勾配を駆け上がって行く。この道の良い所はコーナーはコマイのだがしっかり2車線取ってある事と、交通量が少なく追い越しを掛ける回数が少ないく走りに集中出来るところだ。

 前の2台と後ろの2台の間隔が徐々に開いて行き、前の2台が視界から消えていく。K氏はこのようなペアーピンカーブが続く道の経験が少なく、ライン取り、ブレーキングがバラバラで走るのに苦労しているのが後ろから見て取れる。登りのペーピンカーブに連続では、TZRのパワーでは並ぶ事は出来てもR6の前に出る事は不可能で、ここはK氏のお尻をジックリ見る事に決め込む。

 その時我々の前方で一つのドラマが展開されていたようだが、私たちには知る由も無った。これからの話しは、後でP氏とM氏から聞いた話である。


 まずはその時の2人の状況を説明しておこう。P氏はこの時間帯になると、電池は切れかけていてモチベーション(日本語では動機付けと言うらしい。)が低い状態。高速コーナーは得意だが、どちらかと言うとヘアーピンコーナーは苦手なP氏は、坂梨峠には手を焼いていた。更にミラーの中に大きく映っているM氏の姿も無言のプレッシャーとなっていた。

 一方M氏は、この夕方の時間帯が自分の時間とモチベーションも高く前を行くP氏を追っていた。年のせいとは言わないが、最近高速コーナーよりは低中速コーナーが楽しく走れるようになっているM氏にとって、この坂梨峠はもってこいのスチエーションであった。FUNKYの不文律として、先頭を走るライダーを後続が抜く事を禁じている(先頭以外は自己責任でフリー)。しかし先頭がウインカーを揚げて左に寄るとか、ミスして失速した時等はその限りではない。

 従ってM氏としては、P氏を抜ける状況にあったとしても抜き去るわけにはいかない訳で、ただただP氏のミラーに大きく写ってプレッシャーを掛け続けるしか、する事は無かった。

 そのプレッシャーが影響したかどうかは分からないが、P氏が痛恨のミスを犯してしまう。コーナーの先の道に視線を送っていたP氏が視線を戻すとそこにはもうコーナーが迫っていた。コーナーの処理が遅れてしまったP氏は、思わずはらんでしまう。これを見逃すM氏ではなく「この場合は越してもいいんだよね。」と「ニヤッ」と笑ったかどうかは知らないが、M氏はP氏の前にスッと出る。

 P氏を抜いたM氏は擦り減ったリヤタイヤをものともせず、リヤタイヤを左右に振り出しながらP氏を徐々に引き離して行く。一方、緊張の糸が切れてしまったP氏にM氏を追い駆ける気力は残っておらず、P氏はマイペースでM氏を追ったのである。青森と秋田の県境にある坂梨峠を越え秋田県に入ると、道の勾配は青森側より緩くコーナーのRも大きくなって道は下って行く。

 充分に走りを楽しんだ頃、道路右側に東北自動車道が見えて来る。この谷間の景色には見覚えが有って高速道の坂梨トンネルを抜けた付近の景色と思われる。少し行くと道路左側にパーキングエリヤが見えて来て、そこにはM氏とP氏の姿が有った。そこでまた私が先頭に戻って小坂町を目指して走り始める。


 国道282号線坂梨峠は険しい山を越える峠としては珍しく頂上部分にトンネルを持たないコーナーのキツイ峠であった。最近造られた峠の殆んどは、積雪時の事を考えてか勾配は緩くコーナーのRも大きく取ってあり、峠部分はトンネルになっている場合が多い。今となってはヘアーピンカーブが連続する坂梨峠の様な峠は我々ライダーに取って貴重な存在であり、私としてはこの峠道が改修される事無くこのままの状態で残していってもらいたいと思う。是非、世界遺産に指定してライダー達の為に後世に残していってもらいたいものだ。

 PM5:45、小坂、毛馬内、を通って大滝温泉に渡る橋の先に在るローソンで休憩を取る。いつもここに停まる時は日が落ちかけている時が多いが、今日はまだ明るい。考えて見ると今日は朝から食事らしい食事をしていない事に気付く。カニやら帆立やらシロウオは食べたが炭水化物を摂取してなかった為、腹が減った。私はサンドイッチを買って食べ他のメンバーもそれぞれ焼きそばやパンを買って食べている。

 ここでの話題は二つ。坂梨峠とM氏とP氏のバトルの話であった。今日の予定には無かった坂梨峠であったが、話し合いの結果こんなに楽しい峠はFUNKYの定番メニューに入れる事に決定された。

 もう一つのP氏とM氏のお話は、P氏とM氏のバトルの結果P氏がヘアーピンコーナーが苦手な事が判明し、そしてそれを本人がを認めた事である。私はP氏から今だかつて苦手と言う言葉を聞いた事が無かった。彼が苦手と認める位、彼のとって今回の出来事は衝撃的な事であったのだろう。


 食事?を終えてローソンを出発、先日K氏が情報を仕入れてきた木苺ソフトを食べる為、五城目の道の駅に向かう。
   
 国道285号線に入ってからが速かった。しかし、最近に無いスピードで五城目の道の駅に着いたのがPM7:00を少し回ってしまっていた。道の駅の駐車場には車の姿は殆んど無く、数台の車と共にバイクが2台トイレの前に停まっているだけであった。我々も2台のバイクと少し離れた所にバイクを止める。

 後で調べて見るとここの道の駅はPM6:00までのようで、ローソンを出る時点で道の駅の営業は終了していた事になる。木苺ソフトは次の機会に譲るとしても、PM6:00までにここに着くなると木苺ソフトへの道は険しいかもしれない。

   
 ここでM氏によるヘアーピンコーナー攻略講座が開かれ受講生のk氏は盛んに質問を飛ばしていたが、この時一番この講座を聞かなければいけない筈のP氏は、お腹の具合がよろしくなく前の建物の中でにジャガミコンでいた。⇒


 秋田には8時少し前に帰って来たが、帰り道の途中にK氏の自宅が在った為、K氏は直帰し3名で無事秋田に帰って来る事が出来た。心配していたM氏のリヤタイヤも、溝の痕跡はまだ残っていた。FUNKYの中で磨耗限界を越えたタイヤを使わせたら彼の右の出る者はいない。

 今日は天候にも恵まれ、目的の食べ物も食べられたし、入った温泉も良かったし、新しい楽しい道も発見出来たし、TZRの調子が良く(オイル欠事件はあったが。)走りも楽しめたし、結構楽しめた547kmであった。

 久ぶりの500キロツーリングで体はボロボロだが、これを繰り返す事により体も鍛えられ次回はもっと楽になる事だろう。毎回の事だが、明日は殆んど仕事とにならない事を覚悟しなければならないだろう。

 ←最後に今日の主役2人の写真を撮って解散となったが、2人共バトルで酷使した右手は終わっており、このような写真となってしまった。
   
       <次回のツーリングは太平洋を見に行く予定である。>



                                               お わ り  

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